家具の構造と製造工程を知る

家具の構造と製造工程を知る

こんにちは。&FRELの杉浦です。

2月もあっという間に最終日です。28日までしかありませんのでいっそう早く感じてしまいますね。ですが冬から春へと少しずつ、でもしっかりと季節が変化していくこの時期は、私の好きな季節の一つです。

家具解体新書

私の愛読書の一冊にChair Anatomyという本があります。Anatomyは日本語で「解剖学」といったニュアンスになります。

有名どころの家具がどのような部材構成で、どのような接合を介してチェアとして成り立っているか、実際にチェアを分解した写真とともに紹介しています。Anatomyという意味の通り、家具版解体新書ですね。分解しないとみることのできない、面白いアイデアがたくさん掲載されています。

本当は実際に製品を購入して分解してみたいのが設計者・デザイナーの性ですが、何十万円もする家具を簡単に購入することもできませんし、まして構造を見る為だけに解体することもできません。でも見てみたい、、、そんな欲求を少しだけ満たしてくれる本といえます。とはいえ、世に数あるチェアの中からピックアップされたわずか数十種類のチェアだけですから、この一冊だけではとても十分とは言えません。第2弾、3弾を待っているのですが、今のところ続編が発売される気配はなさそうです。

家具の製造工程をみる

細かな構造までは見れませんが、最近はメーカーが家具の製造工程をYoutubeにアップするケースも増えてきました。お金を出して製品を買うまえに、その工程や製造ポリシーといった背景までを知ったうえで製品を購入したいというニーズは少しづつですが増えているような気がします。その点においても、ショートドキュメンタリー風につくられているメーカーの製造工程動画はメーカーのモノづくりのを直接的に表現していて興味深いですね。

例えばこれは曲げ木の家具で有名なThonetの製作動画です。

Thonet Bending Process

つくりやすさと生産性

以前は直接工場見学に行かないと見れなかった製造工程が、Youtube等を通じて簡単に見られるようになっっています。数本似たような動画を見ると、後はYoutubeが次々に類似動画を集めてくれますから、ありがたいことです。

こうした動画を見続けていて最近私が感じたことは、どこのメーカーも、特に老舗メーカーであればあるほど、製造品目に関わらずしっかりと手間をかけてつくっているんだなぁということでした。生産性やつくりやすさといったことは製造メーカーとしてはもちろんとても大事な事ですが、老舗メーカー、特に欧州の老舗メーカーの製造工程を見ていると、こんな手間のかかるやり方で今もつくっているのだと感心してしまいます。

単に昔ながらのやり方というわけではなくて、最新鋭の機械をどんどん使いながらも、突然何十年も変わらないような原始的な工程が出てきたりして興味深いです。

製造側としては、生産性に優れて手離れ良くつくれる製品を目指すことは重要ですし、常にそれを意識して設計をしなくてはなりません。一方で一消費者として考えると、いろいろ迷ってそれなりのお金を出して買おうと思った家具が、フルオートメーションで全部機械や流れ作業のだけでつくられていると知ると、ちょっと寂しく味気ない気持ちになりそうな感じもします。むしろすごい手間がかかっていたり、面倒くさそうな工程が垣間見えたほうがより欲しい気持ちが強くなったりしませんか?

製品や種類、価格によって生まれる感情はもちろん違うのでしょうが、家具はそのような感情が生まれるボーダーラインにいるプロダクトに私は感じていて、そこがまた家具の面白さじゃないかな?と日々思っています。