家具とアートの間
みなさん、こんにちは。&FRELの杉浦です。
今週の日曜美術館はデザイナーの倉俣史郎さんを取り上げていました。見られた方も多いと思います。倉俣さんは家具・インテリアデザイン界の大巨匠なのですが、あまりテレビで取り上げられることが多くなかったように思いますので、とても新鮮でした。
名作「ミスブランチ」に至るまでの倉俣さんの思いや葛藤が細かく語られた素晴らしい内容だったと思います。私もすでに3度見直しましたが、何度見ても胸が熱くなります。
アートと家具、近いようでその境界ははしっかりと線引きされているように感じます。倉俣さんが活躍されていた頃に比べると、今はその線引きはさらに顕著だと思います。。現代の家具デザイナーはコマーシャルな環境の中で活動している方がほとんどで、ブランド・メーカーという枠の中で、美しさや目新しさにフォーカスしたり、一方で機能的な使いやすさを追求することで製品開発のサイクルが成り立っています。いわば実用使いの範疇における発想とデザインを主として新しいものを生み出していると言えると思います。
この状況は家具業界自体がものすごく成熟して、ビジネスモデルが確立したこと、そしてデザイナーという存在の必要性・重要性が認められたことも大きな要因だと思います。
倉俣さんが活躍されていた頃の時代感や空気感を実際に感じ取ることはもちろんできませんが、家具・インテリアデザイナーとは何者だ?という環境の中で、作品に強い思いを込めて、意味を持って発表していたのだと思います。その思いが時にはアートのような佇まいになり、時には異素材を用いた斬新な家具が生まれる背景になっていたのかもしれません。
椅子という道具が生まれてすでに数千年、座る行為を表す動詞は当たり前ですが「座る」しかないわけですが、倉俣さんのミスブランチが表現したものはその枠を離れた、まさに家具とアートの間という世界観を表現しているように思います。
今からもう4度目の日曜美術館を鑑賞します(笑)