”座る”を考えなおすデザイナー ピーター・オプスヴィック

みなさん、こんにちは。&FRELの杉浦です。
先日マレーシアの中古家具サイトで、HÅG社(ホーグ)の Capisco(カピスコ)というチェアを偶然見つけ、購入しました。このチェアはノルウェー人工業デザイナー、ピーター・オプスヴィックによって1984年にデザインされ、今なお世界中で販売され続けている名作チェアのひとつです。
このデザイナーをご存じない方も、Stokke社のトリップトラップというチェアを見たことのある方、使われている方は多くいらっしゃるのではないでしょうか?
まったくの偶然ですが、私がこのカピスコチェアを購入してすぐにオプスヴィックが今年9月の末に亡くなったことを知りました。そんなこともあり、今日はオプスヴィックについて書いてみたいと思います。
カピスコやトリップトラップのデザインをみて皆さんどう思われるでしょうか?いわゆる典型的なチェアのイメージとはだいぶ違っていますよね?今でこそこれらのデザインを目にする機会も増え、また類似品も多数あることから一般化しましたが、発売当時はもっと奇抜なデザインと受け止められたのではと想像します。
オプスヴィックはデザイナーであり、一方で”座る”ということを徹底的に研究し、トライ&エラーからのスタディーを実践してきた研究者でもありました。座り心地という観点だけでなく、人間の身体的なや特性や習性から、それまでの座りに対する概念にとらわれず、本当に人にとって快適で使いやすい椅子とは何か?を生涯にわたって考え続けた人であったと思います。
それらの研究や歩みは”座る”を考え直す (rethinking sitting)という著書で知ることができます。この本は座るという行為を体系的かつ工学的な観点でまとめられた数少ない本格的な椅子に関する本で、そういう点からもとても貴重な本です。もっと椅子について深く知りたいという方は是非読んでみてください。(日本ではインテリアやコレクションとしての家具を紹介する本はたくさんありますが、家具そのものの機能や設計の背景を解説している本は、残念ながらごくわずかにしか出版されていません)
この本を読んでみると、オプスヴィックはかなり実験的なアプローチを通して座るいう行為、そして座る行為における快適とは何か?ということを考えつづけ、実証してきたことがわかります。一連の研究は座るという言葉にすると一言で表される行為に対して、多くの変化と新しい認識をもたらしました。その考えや研究成果の多くは現在まで受け継がれていますし、それは彼の生み出した多くのデザインが数十年たった今も販売され続け、その後生まれた数多くのチェアと比べても決して見劣りしない、むしろ今でも新鮮に感じられることによって証明されているといえます。
それはオプスブィックのデザインが、研究とトライ&エラーの結果から生まれた快適に座るための道具という側面をベースとしながら、実際に製品になった際にはどこかチャーミングで愛着を感じさせてくれる「デザインの巧さ」も持ち合わせているからでしょう。
ご冥福をお祈りいたします。