プラナカン住宅の椅子
みなさん、こんにちは。&FRELの杉浦です。最近のマレーシアは猛暑が続いていて外に出るととにかく暑いのですが、一方で室内はというと冷房の設定を下げれるだけ下げてとにかく冷やしているので、その温度差が体に応えます。。
先日マレーシアのペナンという街に立ち寄った際、プラナカン住宅を見てきました。(プラナカンについてはまた別途このブログでも紹介させていただきたいと思います。)プラナカンとは、15世紀後半頃から、中国からマレーシアをはじめとする東南アジアに移住した人々とその子孫の方の事を指し、中国と現地の文化の間で少しづつ変化を重ねながら昇華してきた独自の生活様式や文化を総省してプラナカン様式などと呼ばれています。住宅のみならず、器から衣類・食文化まで、プラナカンならではの華麗さと美しさ、そして独自性を感じることができます。
そんなプラナカン屋敷で見かけた2脚のチェア。古いものなのかレプリカなのかはよくわかりませんが、デザインもつくりもよく似ています。
似てはいますが、背もたれ中央板の曲げ方と角度が大きく違っているのがわかるでしょうか?この曲げ方とカタチ、実は椅子の座り心地を決める大きな要素を含んでいます。
正しい姿勢で着座し、疲労や部分的な痛みを軽減するためには、背骨を緩やかなS字に保つような形状で背を設計する必要があります。特にランバー(腰椎)を正しい位置でしっかりとサポートしてあげることで、無理のない姿勢が保ちやすくなりますので、オフィスチェアの多くに調整機能付きのランバーサポートがついています。
さて写真の椅子ですが、座り心地や正しい姿勢を保つという点において優れているでしょうか?
答えはもちろん奥にある椅子のカーブですね。
人間の体のカーブに比較的近く、腰の部分から背中にかけて程よく体にフィットします。一方手前の椅子のカーブはどうでしょうか?人間が座ることを考えるととても不自然なカーブです。実際に座ってみると、体と接触する部分がとても少なくて、体を上手く委ねられません。これは椅子の設計としては良くないデザインと言えますが、ひょっとしたら試行錯誤を重ねながら椅子づくりをしていたのかもしれません。
チェアの面白いところは、こんな風にすぐさわれて、実際に座ってみることができるところにあると私自身は思っています。家でもオフィスでも商業施設でも、どこに行ってもチェアは身近なところにありますよね。とても原始的な道具ですが、実に様々なチェアが溢れています。
デザイナーの名前が残されているチェアはほんの一握りで、この椅子のように誰がどのように、どんな考えでつくったのか今や知る由もない椅子でも、実際に座って自分の頭と感覚で考え巡らせることによって、名も知らぬ作者と少しだけ対話できたような、そんな感覚も時に沸いてきます。