ブランドの影響力

ブランドの影響力

みなさん、こんにちは。&FRELの杉浦です。いよいよ4月、新年度の始まりですね。

私は先週中国の広州で開催されたCIFFという国際家具見本市に行ってきました。中国メーカーを中心に素材・部品から完成家具までを網羅した展示会で、世界最大級の家具展示会の一つです。今回の訪問はコロナの影響もあり、5年ぶりの訪問となりました。

会場内で花火をつけながらライオンダンスをする光景(トップ写真)は、いかにも中国の展示会らしいですね。

さてこの展示会、多くの家具が見れてもちろん楽しくはあるのですが、二つの面である意味修行であり苦行であるとも言えます。

1つ目は体力。会場がとにかく広く延々と続いています。私は2日間の滞在でしたが、毎日10km近くの歩行距離でした。1日が終わると足はガクガクです。

2つ目は気力と興味。とにかく延々と家具やら家具に関係したものを見続けます。楽しいと思えるのは最初の一時間ほどで、もうあとは気力と根性で家具と向き合います。半日過ぎるとほぼ純粋な興味は失われ、どれも同じ製品にしか見えなくなってきます。お腹一杯で食べれない状態ですね。

とはいえこれだけたくさんの家具を一気に見ると、普段とは少し違ったことを考えたりもします。今回は、私がこの展示会の間に考えたことを書いてみたいと思います。

 ハーマンミラー社にコズムチェアというオフィスチェア(下記写真)があります。

 ハーマンミラー社はアメリカの大手家具会社で、先進的なオフィス家具を継続して発表している一方で、イームズデザインの販売を手がける世界で最も名前の知られている家具会社の一社です。

コズムチェアの特徴は、なんといってもその製品カラーです。オフィス家具といえば、当時はブラックやグレー、ホワイト系の家具が一般的でした。そこへ老舗の家具メーカーが鮮やかなレッドを筆頭とした色合いを大きくフィーチャーし、さらにメカニズムや脚部までも同じ色で揃えた印象は確かに斬新な印象でした。

ただ今までそういうデザインがなかったか?といえば決してそんなことはなく、特に色物が好きな中国メーカーでは、それなりに整ったデザインでこのようなカラーバリエーションを持った製品を早くから製品化していて、過去のCIFFでも展示されていました。

でも当時の私は、そんな色の使い方がスタンダードになるとは思ってなかったですし、むしろやっぱり中国ぽいデザインと手法だなとネガティブに感じていたように思います。 これをコズムチェア以前と定義します。

そして2018年末にコズムチェアの発売です。その後はコズムチェアと同じようなカラーを全面に押し出した製品がそこかしこから出てきます。今回のCIFFでもコズムの流れを汲んだ製品とはっきりと感じられるものだけとっても、ゆうに50以上はあったように思います。コズムチェア発売以後です。

コズムチェア発売以後、その配色の仕方や色の選択は一気にトレンド化しました。コズム発売以前は私自身違和感を感じていたと書きましたが、発売後はもうそんな感覚は無くなります。むしろ業界での大きなスタンダートとなり、それまで数色の選択肢しかなかったフレーム色は一気に広がります。

部品メーカーもそれに追随して、色バリエーションにフィーチャーした部材をアピールします。

 デザインの好き嫌いはもちろん主観的なものですが、一方で大きなトレンドやブランドの影響力が自分の主観だと思っている好みに知らず知らず入り込んできます。コズムチェア発売からの流れもわかりやすい一例だと思います。

発売以前・・・コズムのような配色に違和感、ネガティブな印象

発売後・・・ハーマンミラーというブランドが大胆な配色を出したという事実。ハーマンミラーがやったことで、他社も安心して追随できる

 この影響力はやはりトップブランドだから出せる力です。小さなメーカーが仮に全く同じデザインを出したとしてもここまで広がりはしなかったでしょう。私はトレンドとい言葉があまり好きではありませんが、今回はトレンドという事を強く感じた展示会でもありました。