デジタルとアナログの間で
みなさん、こんにちは。&FRELの杉浦です。気づけば11月も一週間が過ぎ、2025年もあとわずかになってきました。
先日、藤井風さんのマレーシア公演を見に行きました。コンサートに行くまでは、藤井さんの名前といくつかの曲をなんとなく聞いたことがある程度だったのですが、実際に藤井さんの公演を見て、曲のすばらしさやパフォーマンスのレベルはもちろん、藤井さんから溢れ出てくる何か大きなうねりのようなグルーブ感に圧倒されました。まだ27歳の若さ。すごい才能とパワーを目の当たりにして、私もすっかり藤井さんのファンになりました。
分野は違いますが、プロダクトデザインの世界でも若い世代の才能やパワーを目の当たりにすることが多くなりました。マレーシアでも若手デザイナー、デザイナー志望の方のポートフォリオなどを見る機会が多々あるのですが、20代前半でもハッとするような高い完成度のポートフォリオを見かけます。
作品はもちろんですが、作品の表現の仕方や手法がとても洗練されていて、うまいなあと感じます。それは最近のソフトウェアの進化もあって、作品の魅力をよりうまく、かつ具体的に表現することが可能になっているという環境も大きいのだと思います。
一方でそれらのツールを過度に頼りすぎて、もしくは使うことにこだわりすぎて本来作品が持っていたの魅力が少し落ちて見えてしまっているように感じる時も少なからずあります。
私が仕事を始めた20年程前でも、3DCADやイラストレーター、フォトショップなどのソフトウェアは当たり前に存在していましたが、その使いやすさと一定のクオリティーに仕上げるためにかかる時間は、現在の製品とは雲泥の差がありました。とにかく何をするにも、今より相当面倒くさかったような気がします。
ツールの進化はとても良いことだとは思いますが、最近はその使いやすさが故に、そしてとりあえずイメージに近い感じのものが表現できてしまうが故の難しさ、表現の仕方もあるのかな?とも感じます。
簡単にできる、誰でも使えるといことは、見方によってはその成果物の価値が相対的に下がる、もしくは当たり前の表現(コモディティー化)になってしまうという側面もやはりあるような気がして、裾野が広がったからこそ、その使い方やクオリティーには今まで以上に注意を払う必要があるのかもしれません。
デザイナーにとっては表現がしやすくなる半面、デジタルツールだけで思いを伝える、感じてもらう、共感してもらうということはこれからどんどん難しくなっていくようにも私は感じています。
そんな思いもあって、私自身も製品提案の手法を試行錯誤しています。最近ではなるべくパワポ形式のプレゼンやCGの羅列を減らして、手作り模型や部分試作を使ってコミュニケーションをとる機会が増えました。CGに変えて水彩画スケッチでイメージを伝えたりということも挑戦しています。(すごい下手くそなのですが。。。)年齢的に完全デジタル化対応は難しい(笑)こともあって、手法としてはアナログ化を進めています。
日本語には「手ざわり感」とか「コク」「キレ」といった、うまく定義できないけれど感覚としては理解できる言葉がありますね。こういう感覚的だけど共有できる価値をうまく伝える、表現するスキルが、デジタル化がいくら進もうとも求められているような感じがしています。